『and then(仮)』1-6

「ああ、榊さん。聞きたいことがあるんだけど…いいかな?」
考えをめぐらしてる私を見かねたのか孝之さんが千鶴に話しかけた。
「あ、はい。なんですか?」
ナイスです孝之さん!千鶴は私から孝之さんのほうに向き直った。
「茜って普段学校ではどんな感じなの?」
「茜ですか?明るくて活発な子ですよ。
最も時々活発の度が過ぎることもありましたけど……」
孝之さんは妙に納得したように頷きながら呟いた。
「あーやっぱりそうなんだ……そうだよな〜昔はあんなに……いててててててて」
思い切り孝之さんの耳を引っ張ってやった。
「た・か・ゆ・き・さ・ん?『昔はあんなに…』の続きはなんですか?」
「痛い痛い痛い痛い痛い」
「鳴海さん……茜と知り合って長いんですか?」
耳をさすりながら孝之さんが答えた。
「たたたた……ああ、うん。初めて茜に会ったのは……3年ちょっと前かな」
「え?」
千鶴が不審そうに問い返す。そう思うのも当然だろう。
私が千鶴と出会ったのは白陵に入学した時、友達になったのはそのすぐ後。
それからの長い付き合いで孝之さんと会ったことはもちろん、
孝之さんのことを話したことさえ多分ない……話すことを避けていたから………
千鶴は聞いていいものか悩んでいるんだろう、気まずそうにしている。
話しても……いいんだろうか……
私達だけじゃない……姉さん…水月先輩…
いっぱいの人に傷をつけてしまった……あの話を…