『and then(仮)』1-7

茜の恋人は鳴海孝之さん…というらしい。
私達より3〜4歳年上だろうか、落ち着いた感じの人。
決して飛びぬけて男前とかそういう風ではない。
どうして茜はこの人を選んだんだろう?初めは少しそう思ったけど、
2人と話しているうちに何となく分かった。
鳴海さんの傍にいる茜はなんていうかすごく自然で柔らかだ。
最近は特にいつもどことなく気を張った感じのしていた
茜がこんなに無防備に誰かに寄り添ってる姿を見るのも、
こんなに自然に微笑うのを見るのも初めてのような気がする。
それに……鳴海さんが茜に見せる笑顔……
とても優しくて……だけど少しだけなんだか…哀しそうな笑顔。
きっと2人はいろんなことがあって、
そしてこうして寄り添っているんだろう…そんな気がした。
鳴海さんの話を聞く限り、2人は茜が高校に入る前、つまり私と出会うより前に出会ったらしい。
私が茜と仲良くなってから2年半、茜が鳴海さんのことを話してくれた記憶はない。
それが何よりも事の重さを示している。