かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相(ASIN:B000E9PIMM)

クリアまでの総時間は15時間程度。まあはっきり言って定価6,000円分の価値はないかな、と。言うのが個人的な総評ですかね。文字通り『3』ではなく『×3』なので3作すべて遊ぶと言うならともかくそうでないなら2,980円かせめて3,980円で出してくれてれば…といった感じ。まあすぐに値段下がりそうですが………

システム等について

今作は過去2作と異なり4人の主人公をザッピングしつつ進めていく『街』形式になっています。ただこれが微妙に出来が悪いです。なんと言いますか4人主人公がいるにも関わらず盛り上がりに欠ける印象を受けました。というのも、『街』にはメインストーリーといえる物語が一応存在しています。ただそれはあくまで『ゲーム』のメインストーリーであり、その他のキャラクターは相互に関わりながらも交錯するのはあくまで『点』でありそれ以外の箇所ではそれぞれに違う物語を生きている訳です。

一方今作のメインストーリーは再び集まった『三日月館での事件』になりますが、その現場、つまり『線』上に全キャラがまとまっているものですから当然物語が広がって行かないわけです。それはエンドにも現れていて、例えばひとりがバッドエンドを迎えると、それに引きずられる形で他のキャラもバッドエンドを迎えます。物語がひとつの『線』で貫かれている為、ひとつが潰れると必然的に全て潰さざるを得ないためです。今作はゲーム全体で90ほどエンドがありますがほとんどがその類のため、一旦物語をクリアするまではいいとしてもそれ以降は思い切り『作業』になる上に、エンドの大半がデッドエンドの為ただただ苦痛なものになります。

視点が変わっても物語自体が変わらず、その場で起きていることについていちいちそれぞれが解説を入れているため同じことを3度も4度も聞かなければなったり、細かいところの描写の言い回しがキャラが違うにも関わらず似たり寄ったりになってしまっているのもマイナスです。

シナリオ等について

これも上と大幅に関わりますが、別にオカルト系の物語があるのは構いません。場にそぐわないキャラクターの物語があるのも構いません。ただこれまでのかまいたちの夜ではそう言った物語は全て本編とは別の物語であったり、あるいは本編のメインストーリーからは離れた位置にありました。それが今回ではこのゲームのメインの『線』である『三日月館での事件』に全て詰め込まれて一緒くたにされてしまっている結果、ひとりひとりの物語の内容と質が薄くなってしまってるんですね。そこに全くそぐわないキャラクターや物語を持ってきているため感情移入が出来ないどころか失笑しか出てこないという……

『事件の真相を暴く』物語、『全ての発端を知る』物語、『全ての原因を取り去る』物語と『ある女性の恋を巡る』物語、これを同時進行で無理矢理やろうとしたのがそもそもの失敗の原因なんではないかなと。『街』みたいに別々の舞台でそれぞれに進行させて行きつつ交錯させ、最期に合流させても良かったと思うんですよ。正直言ってなんでこんな半端なもの作ったのかな、と。

後はキャラクターの個性がいまいち出きれて無い気がします。主人公として登場している連中はまあいいとしてそれ以外のキャラが脇役以下の存在になってしまっているというのがどうにも………
別にここまでやったなら真理や美樹本含め全キャラをプレイヤーとして出しても良かったと思うんですが。容量使い切ってるようにも見えないですし。美樹本シナリオとか『ピンクの栞』での設定を活かせば思い切り力の抜けたある意味でチュンソフトらしい話になると思うんですが…………
全員が明後日の方向を向いた三角関係の物語とか良くないですか?(ぉ